秘密 トップ・シークレット 2008(5巻)レビュー1
STORY
それはある末期ガン患者の懺悔から始まったーー
「60年前 金欲しさに子供を誘拐して失敗して……殺した」
しかし、出てきたのは別の4、50代の男性の屍蝋化死体だった。
科学警察研究所法医第一研究室の監察医 三好雪子は
「この死体の時効はまだ来ていない。MRI捜査で犯人を捜すべきだ」と主張するが、薪は「技術的にも難しい。他に優先する事件は山ほどある」と反対する。
青木は迂闊な一言で、勤務時間外に一人でその脳を調べることとなったがーーー

蝋化死体事件。
事件としてはそんなに複雑でもないし普通といえば普通なんですが、この巻は薪×青木×雪子の迷走っぷりがすごいです。
雪子の迷走っぷりが目に付きますが、実は一番迷走しちゃったのは薪さんじゃないかって思ったりしてます……
それはある末期ガン患者の懺悔から始まったーー
「60年前 金欲しさに子供を誘拐して失敗して……殺した」
しかし、出てきたのは別の4、50代の男性の屍蝋化死体だった。
子供とは別の死体が出てきてしまったのだ。
土壌の化学物質のおかげで、生前の姿を止めた屍蝋化死体ーー
科学警察研究所法医第一研究室の監察医 三好雪子は
「この死体の時効はまだ来ていない。MRI捜査で犯人を捜すべきだ」と主張するが、
薪は「技術的にも難しい。他に優先する事件は山ほどある」と反対する。
青木は迂闊な一言で、勤務時間外に一人でその脳を調べることとなったがーーー
あ、そうそう。
MRI捜査でできることがちょっと広がってるんだよね
5年前に冷凍された脳の映像の再現が可能だった(3巻)
死後10時間以内に脳を取り出す(1巻)
のが
事件性が高い事件の被害者の脳は2週間程度保管することとなった(4巻)
今回完全ではないものの屍蝋化死体の脳の再現にも成功
しかし、屍蝋化死体は無茶じゃない……?電気通るの……?
青木くん!上司に「見てあげたらいい」「あなたどうしてそんな意地悪…」って、聞いてる(読んでる)こっちがビックリだよ!
曽我さんも今井さんも岡部さんも、青木くんに社会人のキホンを教えてあげたほうがいいよ!
薪さんのぽかーん顏からの怒り顏がすさまじく……

青木は岡部から、冷凍脳を再現したときのデータと、「犯人が分かったとしても時効だったら手を引け」という薪からの警告を伝えられる。
その中には被害者の住んでいた団地の集合写真が数枚添付されていた。
写真に死体と同じ顔を見つけ、まだ時効を迎えていないことを確信する青木。
しかし薪は「中には掘り返さないでおいた方がいい死体もある」と呟くのだった。
薪さんにボールを「そーれっ」されてるワンコかわいい。
雪子は仕事場に大学時代の友人 浜田葵 が来訪し、結婚の報告をうける。
薪は、青木が屍蝋化死体の映像の再現に成功した旨を伝えるため雪子のところを訪れるが、浜田葵の姿をみて……
「結婚は考え直したほうがいい」
と彼女がDV(ドメスティックバイオレンス)を受けている可能性を指摘したのだった。
泣いて帰った葵のため、怒って薪に詰め寄る雪子だったが、葵の結婚相手はアルコール依存症で逮捕歴もあり、現在無職であることをデータベースから調べた薪は
「10年来の親友であるあなたは彼女の顔の痣に気がついて一度でも相談に乗ってあげた事があるんですか?」
と言い放つ。
そこへ、岡部が「青木が屍蝋化死体の殺しの映像をつかみました」と伝えにきた。
一方、自宅に戻った葵は婚約者から暴力をうけ、幼いころの記憶とオーバーラップして包丁を握り、混乱したまま斬りかかるが………
薪は屍蝋化死体の男性が、浜田葵とその兄の父親ではないかと集合写真を雪子に見せる。
真夏だというのに長袖を着込んだ兄妹は、写真からも体に痣を作っていることがうかがえた。
そして青木が再現に成功したMRI映像には幼い葵が父親を刺し殺す様が映し出されていたーー。
すぐに葵の元へ向かうという薪に、雪子は「彼女は当時子供だった」と訴えるが、薪は冷笑し
「頭がいいのに想像力がない」
「なぜ再犯の可能性を考えない 彼女は25年前と酷似した状況に置かれている」
「このまま彼女がまた再び殺人を犯すまで待つつもりか」
と怒鳴りつけるがーー
その時電話がなり、彼らが手遅れだったことを知らせた……。
薪さんと雪子さんの主張が食い違いすぎてあわわ……平行線すぎる。
雪子さんは捜査員ではないので、しょうがないと思いますが。
現場に駆けつけると、殺されたのは婚約者ではなく、兄 浜田尚 であった。
婚約者と葵がもみ合いになったところに、兄が訪ねてきて、婚約者を殺そうとして尚が逆に刺殺されてしまったのだ。
記憶が混乱し、10歳の頃に戻る葵。
「お兄ちゃんが葵をお父さんから助けてくれたの お兄ちゃんがいるからもう大丈夫だよって」
「こわかった 一人でずっと こわかったよ……っ」
と泣き崩れる葵を雪子は抱きしめた……。
そして、同じ頃ーー
「60年前の子供」の屍蝋化死体が発見され、子供の母親がその脳を第九でみたいと要望した。
浜田 葵婚約者が 兄 尚を故意に殺害した可能性もあるため 尚の脳を第九で検証することとなった。
雪子もその場に呼ばれ、友人のことについて知っていることを話すよう薪に詰め寄られる。
父親がアルコール依存症で暴力を日常的に振るい、母親は父に油をかけられて殺されたと聞かされたことがあることを告白する。
MRI映像ではそれを裏付ける事実と
命の危険を感じ、一度葵を見捨てて一人家を出た尚の姿ーー
後悔して戻った時には、葵は暴力に耐えかねて父を刺殺してしまったこと、その死体を尚が遺棄したこと。
そして、暴力をふるう婚約者を再び殺そうとしていた葵の代わりに、自らが殺そうとし逆に刺殺されてしまった事実。
なんとしても、葵を守りたかった尚の心情がうつされていたのだった。
ショックを受ける雪子に
「はじめに言った筈です…これは見るべき脳ではないと…」と呟く薪。
っていうか……薪さんは、最初に技術的に無理でした。と嘘をついてでも、この脳を見ないであげてもよかったんじゃないかってちょっと思うんですよ……。
そこが迷走ゆえなのかなと……青木くんのせいでもあるんだけど。
現場にあったノートを親友の雪子から渡してくれという薪に礼をいう雪子だったが……
「まって…つよし君 あなたいつ気がついたの?」
「「はじめに言った筈です」…って?」
「あの屍蝋化死体の犯人が子供だって…葵だって いつ…?はじめから?」
と問う。
雪子が検証した屍蝋化死体の刺し傷から、その犯人が「その子供」であり、条件に該当する家族が葵しかいないことに薪は最初から気がついていた。
「そのノートをどんなカオで彼女に渡すんですか
兄が命をかけて守ったあの妹の「秘密」を無理矢理こじあけたあなたが」
「あなたは決定的に想像力に欠けている
どう頑張っても自分をとりまく倖せな人生しか想像出来ない
自分とはかけ離れた不幸な人達
毎日死んだ方がましだと思いながらそれでも生き続けなければならない人達の苦痛に満ちた犠牲をーー
この社会の底辺に存在する暗闇を
想像しようとしない
見ようとすらしない
いくら経験を積んでも変わらない
それは 監察医として致命的な欠点だ」
と冷たく言い放つのだった。
雪子を擁護する青木だったが、「自分を庇うな」と怒りをあらわにする雪子。
雪子の目が見つめているのが薪であることに気がついた青木は言葉を失うーーー
これは……
ここで雪子さんの想像力のなさを指摘する薪さんですが……
これはね、想像できてしまう、わかってしまう薪さんのほうが稀有だと思うんです。
稀有すぎて、他の人にそれを求めるのは酷です。
もし雪子さんが想像出来る人だとして、相談に乗ってあげたり、結婚を考え直せって言ってあげたりしたところで、葵が自分の意思でなんとかしようと思わない限り、どんな人にも問題を改善することは難しいんです。
もちろん、その時に周りのサポートは大事だとおもうのですが……
私もどちらかというと葵に近い幼少時代を送りまして……薪さんのいう「底辺」に近い存在でした。
底辺にいる人は自分で気がついて地道に這い上がるしかなくて……
想像できたとしても高いところにいる人たち、絶対降りてきてくれるわけじゃないし……
雪子さんみたいに高い能力があって(多分)何の心配もなく教育がうけられて、社会的身分の高い職業についている人には想像できなくて当たり前だとおもいます。
想像できないほうが倖せなこともありますし。
だって、「想像できる」薪さんのほうが生きていくの辛そうで……
そんなにひとりで何もかも想像したり、抱え込んだりしなくていいんだと思います。
底辺の人の状況を想像できる人が増えるより、自分の何かを犠牲にして誰かに尽くしてくれる人が増えるより、どんな辛いことも誰かに気軽に助けを求められるような仕組みを作っていかないといけないんじゃないかなあ。
とはいえ助けを求めることを知らない人もいるし、助けがない、ということもあるしで。
一朝一夕にはもちろん難しいんですけどね……。ってなんか真面目になっちゃった。
それはある末期ガン患者の懺悔から始まったーー
「60年前 金欲しさに子供を誘拐して失敗して……殺した」
しかし、出てきたのは別の4、50代の男性の屍蝋化死体だった。
科学警察研究所法医第一研究室の監察医 三好雪子は
「この死体の時効はまだ来ていない。MRI捜査で犯人を捜すべきだ」と主張するが、薪は「技術的にも難しい。他に優先する事件は山ほどある」と反対する。
青木は迂闊な一言で、勤務時間外に一人でその脳を調べることとなったがーーー

蝋化死体事件。
事件としてはそんなに複雑でもないし普通といえば普通なんですが、この巻は薪×青木×雪子の迷走っぷりがすごいです。
雪子の迷走っぷりが目に付きますが、実は一番迷走しちゃったのは薪さんじゃないかって思ったりしてます……
それはある末期ガン患者の懺悔から始まったーー
「60年前 金欲しさに子供を誘拐して失敗して……殺した」
しかし、出てきたのは別の4、50代の男性の屍蝋化死体だった。
子供とは別の死体が出てきてしまったのだ。
土壌の化学物質のおかげで、生前の姿を止めた屍蝋化死体ーー
科学警察研究所法医第一研究室の監察医 三好雪子は
「この死体の時効はまだ来ていない。MRI捜査で犯人を捜すべきだ」と主張するが、
薪は「技術的にも難しい。他に優先する事件は山ほどある」と反対する。
青木は迂闊な一言で、勤務時間外に一人でその脳を調べることとなったがーーー
あ、そうそう。
MRI捜査でできることがちょっと広がってるんだよね
5年前に冷凍された脳の映像の再現が可能だった(3巻)
死後10時間以内に脳を取り出す(1巻)
のが
事件性が高い事件の被害者の脳は2週間程度保管することとなった(4巻)
今回完全ではないものの屍蝋化死体の脳の再現にも成功
しかし、屍蝋化死体は無茶じゃない……?電気通るの……?
青木くん!上司に「見てあげたらいい」「あなたどうしてそんな意地悪…」って、聞いてる(読んでる)こっちがビックリだよ!
曽我さんも今井さんも岡部さんも、青木くんに社会人のキホンを教えてあげたほうがいいよ!
薪さんのぽかーん顏からの怒り顏がすさまじく……

青木は岡部から、冷凍脳を再現したときのデータと、「犯人が分かったとしても時効だったら手を引け」という薪からの警告を伝えられる。
その中には被害者の住んでいた団地の集合写真が数枚添付されていた。
写真に死体と同じ顔を見つけ、まだ時効を迎えていないことを確信する青木。
しかし薪は「中には掘り返さないでおいた方がいい死体もある」と呟くのだった。
薪さんにボールを「そーれっ」されてるワンコかわいい。
雪子は仕事場に大学時代の友人 浜田葵 が来訪し、結婚の報告をうける。
薪は、青木が屍蝋化死体の映像の再現に成功した旨を伝えるため雪子のところを訪れるが、浜田葵の姿をみて……
「結婚は考え直したほうがいい」
と彼女がDV(ドメスティックバイオレンス)を受けている可能性を指摘したのだった。
泣いて帰った葵のため、怒って薪に詰め寄る雪子だったが、葵の結婚相手はアルコール依存症で逮捕歴もあり、現在無職であることをデータベースから調べた薪は
「10年来の親友であるあなたは彼女の顔の痣に気がついて一度でも相談に乗ってあげた事があるんですか?」
と言い放つ。
そこへ、岡部が「青木が屍蝋化死体の殺しの映像をつかみました」と伝えにきた。
一方、自宅に戻った葵は婚約者から暴力をうけ、幼いころの記憶とオーバーラップして包丁を握り、混乱したまま斬りかかるが………
薪は屍蝋化死体の男性が、浜田葵とその兄の父親ではないかと集合写真を雪子に見せる。
真夏だというのに長袖を着込んだ兄妹は、写真からも体に痣を作っていることがうかがえた。
そして青木が再現に成功したMRI映像には幼い葵が父親を刺し殺す様が映し出されていたーー。
すぐに葵の元へ向かうという薪に、雪子は「彼女は当時子供だった」と訴えるが、薪は冷笑し
「頭がいいのに想像力がない」
「なぜ再犯の可能性を考えない 彼女は25年前と酷似した状況に置かれている」
「このまま彼女がまた再び殺人を犯すまで待つつもりか」
と怒鳴りつけるがーー
その時電話がなり、彼らが手遅れだったことを知らせた……。
薪さんと雪子さんの主張が食い違いすぎてあわわ……平行線すぎる。
雪子さんは捜査員ではないので、しょうがないと思いますが。
現場に駆けつけると、殺されたのは婚約者ではなく、兄 浜田尚 であった。
婚約者と葵がもみ合いになったところに、兄が訪ねてきて、婚約者を殺そうとして尚が逆に刺殺されてしまったのだ。
記憶が混乱し、10歳の頃に戻る葵。
「お兄ちゃんが葵をお父さんから助けてくれたの お兄ちゃんがいるからもう大丈夫だよって」
「こわかった 一人でずっと こわかったよ……っ」
と泣き崩れる葵を雪子は抱きしめた……。
そして、同じ頃ーー
「60年前の子供」の屍蝋化死体が発見され、子供の母親がその脳を第九でみたいと要望した。
浜田 葵婚約者が 兄 尚を故意に殺害した可能性もあるため 尚の脳を第九で検証することとなった。
雪子もその場に呼ばれ、友人のことについて知っていることを話すよう薪に詰め寄られる。
父親がアルコール依存症で暴力を日常的に振るい、母親は父に油をかけられて殺されたと聞かされたことがあることを告白する。
MRI映像ではそれを裏付ける事実と
命の危険を感じ、一度葵を見捨てて一人家を出た尚の姿ーー
後悔して戻った時には、葵は暴力に耐えかねて父を刺殺してしまったこと、その死体を尚が遺棄したこと。
そして、暴力をふるう婚約者を再び殺そうとしていた葵の代わりに、自らが殺そうとし逆に刺殺されてしまった事実。
なんとしても、葵を守りたかった尚の心情がうつされていたのだった。
ショックを受ける雪子に
「はじめに言った筈です…これは見るべき脳ではないと…」と呟く薪。
っていうか……薪さんは、最初に技術的に無理でした。と嘘をついてでも、この脳を見ないであげてもよかったんじゃないかってちょっと思うんですよ……。
そこが迷走ゆえなのかなと……青木くんのせいでもあるんだけど。
現場にあったノートを親友の雪子から渡してくれという薪に礼をいう雪子だったが……
「まって…つよし君 あなたいつ気がついたの?」
「「はじめに言った筈です」…って?」
「あの屍蝋化死体の犯人が子供だって…葵だって いつ…?はじめから?」
と問う。
雪子が検証した屍蝋化死体の刺し傷から、その犯人が「その子供」であり、条件に該当する家族が葵しかいないことに薪は最初から気がついていた。
「そのノートをどんなカオで彼女に渡すんですか
兄が命をかけて守ったあの妹の「秘密」を無理矢理こじあけたあなたが」
「あなたは決定的に想像力に欠けている
どう頑張っても自分をとりまく倖せな人生しか想像出来ない
自分とはかけ離れた不幸な人達
毎日死んだ方がましだと思いながらそれでも生き続けなければならない人達の苦痛に満ちた犠牲をーー
この社会の底辺に存在する暗闇を
想像しようとしない
見ようとすらしない
いくら経験を積んでも変わらない
それは 監察医として致命的な欠点だ」
と冷たく言い放つのだった。
雪子を擁護する青木だったが、「自分を庇うな」と怒りをあらわにする雪子。
雪子の目が見つめているのが薪であることに気がついた青木は言葉を失うーーー
これは……
ここで雪子さんの想像力のなさを指摘する薪さんですが……
これはね、想像できてしまう、わかってしまう薪さんのほうが稀有だと思うんです。
稀有すぎて、他の人にそれを求めるのは酷です。
もし雪子さんが想像出来る人だとして、相談に乗ってあげたり、結婚を考え直せって言ってあげたりしたところで、葵が自分の意思でなんとかしようと思わない限り、どんな人にも問題を改善することは難しいんです。
もちろん、その時に周りのサポートは大事だとおもうのですが……
私もどちらかというと葵に近い幼少時代を送りまして……薪さんのいう「底辺」に近い存在でした。
底辺にいる人は自分で気がついて地道に這い上がるしかなくて……
想像できたとしても高いところにいる人たち、絶対降りてきてくれるわけじゃないし……
雪子さんみたいに高い能力があって(多分)何の心配もなく教育がうけられて、社会的身分の高い職業についている人には想像できなくて当たり前だとおもいます。
想像できないほうが倖せなこともありますし。
だって、「想像できる」薪さんのほうが生きていくの辛そうで……
そんなにひとりで何もかも想像したり、抱え込んだりしなくていいんだと思います。
底辺の人の状況を想像できる人が増えるより、自分の何かを犠牲にして誰かに尽くしてくれる人が増えるより、どんな辛いことも誰かに気軽に助けを求められるような仕組みを作っていかないといけないんじゃないかなあ。
とはいえ助けを求めることを知らない人もいるし、助けがない、ということもあるしで。
一朝一夕にはもちろん難しいんですけどね……。ってなんか真面目になっちゃった。
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