ぼくの願い事 1
お久しぶりですー!!
いやあ………
死にかけてましたよ?
あ、でもですね、ちょっとわたしにとって朗報もあったんです。
忙しいのが、7月が終わったらちょっと良くなるかもしれないんです。
そんなわけで、7月を頑張って乗り切れば……!!と希望を抱いてます。
まあ、メロディも8月号お休みでしたし。
でも10月号は巻頭カラーですって?
なのに岡部と波多野ですって?
ううん……
いや2人とも好きだけど、カラーで欲しい『好き』じゃないんすよ……(笑)
いや薪さんが出ないなんてありえないでしょうけどね!
楽しみだー!
そんなわけで。
じんわりと鈴薪祭りの時期ですね。
実は〜お話自体はずっと温めていたんですが〜〜
鈴薪祭りなのに………青薪やんけ!!
というお声が聞こえてきそうな内容なのですが……
でも私にとっては鈴薪、かなあ!
7月はこれをおおくりしたいと思います!
久々のSS!
まあ、気長におつきあいくださいませ〜〜!

「ぼく、ねがいごとをしているんだよ。
いつも いつも、いつまでも、きみといっしょにいられますようにってさ。」
(しろいうさぎとくろいうさぎ)
俺は膨大な絵本の量に圧倒されていた。
長らく絵本とは無縁の生活を送ってきたから、いもむしやらちいさなくまやらうさぎやらのそのカラフルでパワフルな存在がどうにも眩しかった。
その中から目当ての本が探せるのか、一瞬不安になりながらも、平積みしてある絵本を確かめていく。
数日前テレビで紹介されていた絵本だ。
おそらく、できる店員さんがいる書店なら平積みにしてアピールするはず。
ずらっと並んだ絵本の中に、それはあった。
ふてぶてしいような表情の猫が堂々と描かれている絵本。
赤い字で「100万回生きたねこ」と書いてある。
『できる書店員』さんが「TVで紹介されました!永遠のロングセラー!」というポップを飾っている。
俺はそっとその絵本を手にとってめくってみた。
ことの起こりは、姉のお願いだった。
「たくさん絵本の読み聞かせをした子って、頭が良くなるんですって」
どこかで仕入れてきた子育てネタを熱心に語る姉。
最近彼女は母親になったばかりだ。我が姉ながら、彼女が振りまく幸せなオーラはとても微笑ましかった。
「ねえ、一行。いい絵本があったら、買っておいてよ。」
「気が早いなあ、姉さんは」
「だってすぐよ。すぐ大きくなっちゃうわ。すぐに絵本を読み聞かせるようになるわ。」
愛おしそうに我が子を抱く姉。そんな2人のためなら絵本くらい100冊でも買ってしまおうという気にさえなった。
……とはいえ、俺は門外漢である上に、仕事で本屋にくる時間さえないくらいだった。
でも先日大きな事件がひと段落し、珍しく落ち着いている。
今日も定時に上がって、こうして本屋にも立ち寄れたりするのだ。
ずっとは続かないだろうけど、たまにはこんな日々があってもいい。
「すこし、まだ早いんじゃないのか」
ぼんやりと絵本をめくる俺の耳元でよく通る声がした。聞きなれた、だけど背筋がピッと伸びるような綺麗な声ーー
「まっ……」
飛び上がるように振り向くと、声の主は驚いた風もなく、視線を俺の持った絵本に定めたまま、もう一度同じことを繰り返した。
「お前の姪っ子には、まだ早いんじゃないか?まだ1歳にもなってないんだろう。」
驚く俺を尻目に、俺の上司、科学捜査研究所第九室長である薪剛警視正は同じ絵本を手にとった。
「薪さんもお帰りですか?」
「ああ……。たまには早く帰れって田城さんがうるさいんでな。注文してあった本もきてたし」
ふと見るとなにやら包装された重そうな本を抱えていた。中身はなんだろう。間違っても絵本でも漫画でもないことだけは確かだけど。
「どうして舞の……俺の姪への絵本だってわかったんですか?」
薪さんはあきれたようにふっと笑ってから、誰だってそう思うだろう。と答えた。
まあ、そう言われてみれば確かにそうだ。
友人もまだ出産にはちょっと早い年代だし、俺の周りで絵本が必要そうなのは舞くらい(まだちょっとはやい、けど)だ
「しかも」
パタン、と絵本を閉じ、そのふてぶてしい猫を俺に向ける
「この本とは」
「お前、この本読んだことがあるのか?」
「あ……いえ。でもすごく人気なんですよね?もう85年位前に刊行されてからもずっと発売されているロングセラーだって……で大筋は大体……。」
「テレビで紹介されてたわけか」
「あ、はい……」
この人があのポップを見逃すわけがないか。
俺はなんとなく悪さを見咎められた小学生のような気持ちになって、目線を上に泳がせた。
「この本は」
薪さんが細くて綺麗な指でそっと絵本を棚に戻す。
「登場人物がみんな死んでしまうんだぞ。そんな絵本、小さな子供には少し哀しすぎないか。」
テレビによると人物、じゃなくて猫物、らしいのだけれど流石にそこはつっこまないでおいた。
「この表紙の猫が死んでも死んでも生き返るんですよね?で、白い猫に出会って恋をして、白い猫が死んでしまってこの猫も死んじゃうんですよね?」
かいつまんだ俺の説明に「身も蓋もないな」とまた呆れたように笑った。
「テレビの紹介で、そんなロングセラーだったらいい絵本なんだろうなって思って、買いに来たんです。でも不思議な話ですよね?100万回生まれ変わって死なない猫が、白い猫と出会って、その猫が死んだらもう生き返らなくなるって……」
「そうだな。絵本だから、それぞれの解釈があっていいんだろうが、いろいろな意見があるらしい。」
薪さんは目線を絵本の表紙に落として、続けた。
「生き物は、決して生き返らない。だから白い猫に出会う前の猫は『生き物』ではなく化け物の類で……愛情を知って『生き物』になったから生き返らなくなったのだとか」
「100万回死んで、一度もその死を悼んだ人々に心を寄せることがなかった猫が、悲しみを知ったから死んだのだとか」
俺はそんな風に語る薪さんの横顔をじっと見続けた。
胸がざわざわした。
何かが、頭の片隅にひっかかってチリチリと音を立てる。
「でも……」
薪さんの声が囁くように小さくなる。
「もしかして、自分の全てを変えてしまうような人と出会ったら。そしてその人を失ってしまったら。
その時はもう生きてはいけない、ということなのかもしれないな……」
その横顔を。
俺は確かに以前見たことがあるような気がしたのだ。
続く
いやあ………
死にかけてましたよ?
あ、でもですね、ちょっとわたしにとって朗報もあったんです。
忙しいのが、7月が終わったらちょっと良くなるかもしれないんです。
そんなわけで、7月を頑張って乗り切れば……!!と希望を抱いてます。
まあ、メロディも8月号お休みでしたし。
でも10月号は巻頭カラーですって?
なのに岡部と波多野ですって?
ううん……
いや2人とも好きだけど、カラーで欲しい『好き』じゃないんすよ……(笑)
いや薪さんが出ないなんてありえないでしょうけどね!
楽しみだー!
そんなわけで。
じんわりと鈴薪祭りの時期ですね。
実は〜お話自体はずっと温めていたんですが〜〜
鈴薪祭りなのに………青薪やんけ!!
というお声が聞こえてきそうな内容なのですが……
でも私にとっては鈴薪、かなあ!
7月はこれをおおくりしたいと思います!
久々のSS!
まあ、気長におつきあいくださいませ〜〜!

「ぼく、ねがいごとをしているんだよ。
いつも いつも、いつまでも、きみといっしょにいられますようにってさ。」
(しろいうさぎとくろいうさぎ)
俺は膨大な絵本の量に圧倒されていた。
長らく絵本とは無縁の生活を送ってきたから、いもむしやらちいさなくまやらうさぎやらのそのカラフルでパワフルな存在がどうにも眩しかった。
その中から目当ての本が探せるのか、一瞬不安になりながらも、平積みしてある絵本を確かめていく。
数日前テレビで紹介されていた絵本だ。
おそらく、できる店員さんがいる書店なら平積みにしてアピールするはず。
ずらっと並んだ絵本の中に、それはあった。
ふてぶてしいような表情の猫が堂々と描かれている絵本。
赤い字で「100万回生きたねこ」と書いてある。
『できる書店員』さんが「TVで紹介されました!永遠のロングセラー!」というポップを飾っている。
俺はそっとその絵本を手にとってめくってみた。
ことの起こりは、姉のお願いだった。
「たくさん絵本の読み聞かせをした子って、頭が良くなるんですって」
どこかで仕入れてきた子育てネタを熱心に語る姉。
最近彼女は母親になったばかりだ。我が姉ながら、彼女が振りまく幸せなオーラはとても微笑ましかった。
「ねえ、一行。いい絵本があったら、買っておいてよ。」
「気が早いなあ、姉さんは」
「だってすぐよ。すぐ大きくなっちゃうわ。すぐに絵本を読み聞かせるようになるわ。」
愛おしそうに我が子を抱く姉。そんな2人のためなら絵本くらい100冊でも買ってしまおうという気にさえなった。
……とはいえ、俺は門外漢である上に、仕事で本屋にくる時間さえないくらいだった。
でも先日大きな事件がひと段落し、珍しく落ち着いている。
今日も定時に上がって、こうして本屋にも立ち寄れたりするのだ。
ずっとは続かないだろうけど、たまにはこんな日々があってもいい。
「すこし、まだ早いんじゃないのか」
ぼんやりと絵本をめくる俺の耳元でよく通る声がした。聞きなれた、だけど背筋がピッと伸びるような綺麗な声ーー
「まっ……」
飛び上がるように振り向くと、声の主は驚いた風もなく、視線を俺の持った絵本に定めたまま、もう一度同じことを繰り返した。
「お前の姪っ子には、まだ早いんじゃないか?まだ1歳にもなってないんだろう。」
驚く俺を尻目に、俺の上司、科学捜査研究所第九室長である薪剛警視正は同じ絵本を手にとった。
「薪さんもお帰りですか?」
「ああ……。たまには早く帰れって田城さんがうるさいんでな。注文してあった本もきてたし」
ふと見るとなにやら包装された重そうな本を抱えていた。中身はなんだろう。間違っても絵本でも漫画でもないことだけは確かだけど。
「どうして舞の……俺の姪への絵本だってわかったんですか?」
薪さんはあきれたようにふっと笑ってから、誰だってそう思うだろう。と答えた。
まあ、そう言われてみれば確かにそうだ。
友人もまだ出産にはちょっと早い年代だし、俺の周りで絵本が必要そうなのは舞くらい(まだちょっとはやい、けど)だ
「しかも」
パタン、と絵本を閉じ、そのふてぶてしい猫を俺に向ける
「この本とは」
「お前、この本読んだことがあるのか?」
「あ……いえ。でもすごく人気なんですよね?もう85年位前に刊行されてからもずっと発売されているロングセラーだって……で大筋は大体……。」
「テレビで紹介されてたわけか」
「あ、はい……」
この人があのポップを見逃すわけがないか。
俺はなんとなく悪さを見咎められた小学生のような気持ちになって、目線を上に泳がせた。
「この本は」
薪さんが細くて綺麗な指でそっと絵本を棚に戻す。
「登場人物がみんな死んでしまうんだぞ。そんな絵本、小さな子供には少し哀しすぎないか。」
テレビによると人物、じゃなくて猫物、らしいのだけれど流石にそこはつっこまないでおいた。
「この表紙の猫が死んでも死んでも生き返るんですよね?で、白い猫に出会って恋をして、白い猫が死んでしまってこの猫も死んじゃうんですよね?」
かいつまんだ俺の説明に「身も蓋もないな」とまた呆れたように笑った。
「テレビの紹介で、そんなロングセラーだったらいい絵本なんだろうなって思って、買いに来たんです。でも不思議な話ですよね?100万回生まれ変わって死なない猫が、白い猫と出会って、その猫が死んだらもう生き返らなくなるって……」
「そうだな。絵本だから、それぞれの解釈があっていいんだろうが、いろいろな意見があるらしい。」
薪さんは目線を絵本の表紙に落として、続けた。
「生き物は、決して生き返らない。だから白い猫に出会う前の猫は『生き物』ではなく化け物の類で……愛情を知って『生き物』になったから生き返らなくなったのだとか」
「100万回死んで、一度もその死を悼んだ人々に心を寄せることがなかった猫が、悲しみを知ったから死んだのだとか」
俺はそんな風に語る薪さんの横顔をじっと見続けた。
胸がざわざわした。
何かが、頭の片隅にひっかかってチリチリと音を立てる。
「でも……」
薪さんの声が囁くように小さくなる。
「もしかして、自分の全てを変えてしまうような人と出会ったら。そしてその人を失ってしまったら。
その時はもう生きてはいけない、ということなのかもしれないな……」
その横顔を。
俺は確かに以前見たことがあるような気がしたのだ。
続く
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