ぼくの願い事 5
「いつも いつも、いつまでも?」くろいうさぎがききました
「いつも いつも、いつまでも!」しろいうさぎはこたえました
しろいうさぎは、やわらかな しろいてを さしのべました。
くろいうさぎは、そのてを そっと にぎりました。
(しろいうさぎとくろいうさぎ)

俺は結局、あのねこの絵本を舞に読んであげられていない。
最後まで平常心で読み聞かせできる自信がないからだ。
本当なら、失われなかった命や未来や、そんなことを思って胸が苦しくなる。
『みんな死んでしまうんだぞ。哀しすぎないか』といった薪さんの心情が、今なら切実にわかる。
俺は結局、あの時の薪さんのことが何もわかっていなかったんだなと改めて思い知った。
あの人の悲しみも、切なさも。
苦しみも。
舞に、物語自体はとても美しいものだから、いつかは読んであげたいけれど……
幼すぎて憶えてないかもしれないが、両親を失った心の傷はいかほどなのか。
彼女の心の傷を抉ってしまうのではないか。
それが怖くて、死が見え隠れする物語を読んであげるのを躊躇してしまうのだ。
一方「しろいうさぎとくろいうさぎ」はお気に入りで何度もせがまれて読んであげた。
薪さん
本当に「女の子はそういうのが好き」でしたよ。
2匹の結婚式のシーンなんかはニコニコしながら聞いてますよ。
姉の結婚式の写真を飾っているせいか、「お母さんはしろいレースで、うさぎはタンポポなんだね」なんて言ったりしていますよ。
そして俺は、薪さんに手紙を書いた。
遠くに、とても遠くにいるあの人に。
あなたと一緒にいたい。と
薪さんのことを知りたいと
今はまだなにもわかっていなくても、それでも。
あなたの苦しみも哀しみも、願いも、少しずつでも、知っていきたいのだと
すこしでも一緒にいて家族になりたいのだ、と。
果たして、あの人に届くだろうか。
この想いと願いが。
でもーー
「ぼく、ねがいごとをしているんだよ。
いつも いつも、いつまでも、きみといっしょにいられますようにってさ。」
そう 俺は願ってみる。
あなたと一緒に、いられますようにと。
ずっとずっと。いつまでも。
あなたのそばで、生きていきたいのです。
「ねえ、そのこともっといっしょうけんめい、ねがってごらんなさいよ」
しろいうさぎが囁く。
薪さん。
いつか、この願いに返事をいただけますか?
いつもいつも、いつまでもあなたと一緒にいたいんです。
薪さんは、どうですか?
いつかーーー
いつか、返事を聞かせてください。
俺はずっと、願い続けていますから。
終
「いつも いつも、いつまでも!」しろいうさぎはこたえました
しろいうさぎは、やわらかな しろいてを さしのべました。
くろいうさぎは、そのてを そっと にぎりました。
(しろいうさぎとくろいうさぎ)

俺は結局、あのねこの絵本を舞に読んであげられていない。
最後まで平常心で読み聞かせできる自信がないからだ。
本当なら、失われなかった命や未来や、そんなことを思って胸が苦しくなる。
『みんな死んでしまうんだぞ。哀しすぎないか』といった薪さんの心情が、今なら切実にわかる。
俺は結局、あの時の薪さんのことが何もわかっていなかったんだなと改めて思い知った。
あの人の悲しみも、切なさも。
苦しみも。
舞に、物語自体はとても美しいものだから、いつかは読んであげたいけれど……
幼すぎて憶えてないかもしれないが、両親を失った心の傷はいかほどなのか。
彼女の心の傷を抉ってしまうのではないか。
それが怖くて、死が見え隠れする物語を読んであげるのを躊躇してしまうのだ。
一方「しろいうさぎとくろいうさぎ」はお気に入りで何度もせがまれて読んであげた。
薪さん
本当に「女の子はそういうのが好き」でしたよ。
2匹の結婚式のシーンなんかはニコニコしながら聞いてますよ。
姉の結婚式の写真を飾っているせいか、「お母さんはしろいレースで、うさぎはタンポポなんだね」なんて言ったりしていますよ。
そして俺は、薪さんに手紙を書いた。
遠くに、とても遠くにいるあの人に。
あなたと一緒にいたい。と
薪さんのことを知りたいと
今はまだなにもわかっていなくても、それでも。
あなたの苦しみも哀しみも、願いも、少しずつでも、知っていきたいのだと
すこしでも一緒にいて家族になりたいのだ、と。
果たして、あの人に届くだろうか。
この想いと願いが。
でもーー
「ぼく、ねがいごとをしているんだよ。
いつも いつも、いつまでも、きみといっしょにいられますようにってさ。」
そう 俺は願ってみる。
あなたと一緒に、いられますようにと。
ずっとずっと。いつまでも。
あなたのそばで、生きていきたいのです。
「ねえ、そのこともっといっしょうけんめい、ねがってごらんなさいよ」
しろいうさぎが囁く。
薪さん。
いつか、この願いに返事をいただけますか?
いつもいつも、いつまでもあなたと一緒にいたいんです。
薪さんは、どうですか?
いつかーーー
いつか、返事を聞かせてください。
俺はずっと、願い続けていますから。
終
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