秘密 Genesis 創世記4
STORY
とうとうプレミアムの入会の儀式に潜入した薪と鈴木。
薪は礼拝堂の中に自分に生き写しの写真を見つける。その写真には55代目マスター澤村敏と記してあった。
そして、鈴木が何者かに連れ去られてしまうーー
それが澤村のしわざだと確信する薪。
2人を追う道すがらプレミアムのグランドマスターから衝撃の真実を聞かされる

あー鈴木さんたらこれで完璧にやられちゃったんだね……
プレミアム入会の儀式当日。
鈴木はメンバーから儀式進行の説明を受け、控え室で待機していた。
薪との打合せでちょうど5時に監視カメラの機能を止めることになっていた。
その打合せで、鈴木は
「オレに出来る事だったら大概なんでもしてやるが人に迷惑がかかったり非合法な事になるんだったら話は別だ。オレは協力できない。そこんところは大丈夫だろうな?」と薪に言う。
薪は驚いたような顔で鈴木を注視する。
「なんだ不満か?」
「いや」
ふわりと微笑む薪
「それを聞いて僕も安心した」
会員から抹消される前に命を抹消されることになる……ってますますプレミアムってどんな会なんだよ。
モンサンミッシェルを模した建物とか、純粋な日本人のための結社だとかいうのなら、そんなバタ臭い必要あるのか!
ここは出雲大社とかに似せて建てとけ!!
葉芝邸内礼拝堂ってことは個人宅内なのか……。冒頭に出てきた建物とはまた違うんだね。
そしてお花のように微笑む薪さん!かわいいかわいい!
やばい!鈴木さん完全にやられてる!!
監視カメラの異常を感知し、警備会社に連絡が入る。
薪はその警備員と入れ替わるように葉芝邸を訪れ、警備会社には邸内から誤作動であると電話を入れる。
儀式用のローブを纏い礼拝堂への潜入に成功する薪。
一方鈴木の控え室には会員が先ほどの誤作動のため点検に訪れた。
自分のせいで仕事増やしてすみません、と心の中で呟く鈴木だったが、先ほどのメンバーとは違う香りがすることに気がつく。
この香りは……薪邸に咲くあの……
「伝統を重んじるのはいい事ですが入館チェックも場所も時間も部屋の調度品まで私が使った30年前と同じというのは」
そういいながら調度品の鎧から剣をとりーー
「セキュリティとしていささか問題がありますね」
「澤…!」
澤村はそのまま剣を鈴木に振り下ろした。
いささか問題じゃなくて大問題だよ!
いまパスワードでさえ1ヶ月ごとに変えろっていわれてるのに、30年変えないってのはちょっと考えられないなー
(いやでも……おじさんやおじいさんだけだったらありうるのかしら……ときどき公共のもので変わらなさにぎょっとすることあるもんなー。)
そしてあの……そもそも論でもうしわけないんですけど、クサノオウでつくった軟膏よりいい薬がいっぱい出てると思うのね……2045年……
(2015年でも、いいのがあると思うのね……)
入会の儀式が時間になっても始まらないことを訝しく思う薪。
始まらないことにはどの会員が「マスター」かわからない。
双眼鏡で会員の様子をうかがうがある列の会員が全員「あの指輪」をつけていることに気がつく。そこに川谷議員の姿も認め、思わず身を乗り出してしまう。
その姿を川谷に発見されーー
「侵入者だ!」
薪は慌てて逃げだす。薪を捉えようと慌てる会員たちだったがまだセキュリティが復活していない。
滅茶苦茶に走って方向もわからず反響する足音に振り返りながら建物内を逃げる薪はーー
「一瞬、鏡かと思った」
自分の顔に生き写しの肖像写真を見つけるーー
その部屋には歴代のマスターの写真が飾ってあった。
そこには父親の写真もあり、『第54代目マスター 薪俊』と記してあった。
そしてその隣。
自分に生き写しの人物の下にはーー
『第55代目マスター 澤村敏」とあった
「そうしているとまるで鏡にうつしているようですね」
薪が振り返ると、川谷が「先生」と呼んでいたマスターの一人がミステリーの本を手に立っていた。
「君はもう本当はこのミステリーの犯人はわかっちゃってるんじゃないですか?」
その人はあの日。10年前のあの日、幼かった自分にその本を贈ってくれた人物だった。
「大きくなりましたね つよし……」
言いかけたその右手を取り、指輪を確認しその手の感触にそれを確信する薪。
「あなたが…!ではご存知なんですね。あの会食の意味を」
「あの夜亡くなった僕の父と母とーーいや…」
『第54代目マスター 薪俊』『第55代目マスター 澤村敏』が並んで写る写真を指差し
「僕の父は僕の父だったんですか?」
と問いかけるがーー
「グランドマスター!問題が起こりました!至急入会儀式中止か続行かご判断を!」
と走りこんでくるメンバー。
新入会員の控え室から入会予定者が姿を消したのだ。
備え付けの鎧の剣と壁についた血痕を残して。
「ここを使用していた入会予定者というのは?」
というグランドマスターの問いに「鈴木克洋」と答え、電話を入れる薪だが鈴木には繋がらない。
……プレミアムの人に携帯預かっておきますって言われてたのに。預けたやつはフェイクだったのかな……??
「行方不明の学生は君の知り合いか?ああ、そうか!東大の同じ文科一類!友人なのかね?」
「いいえ」
薪は携帯を操作しながら答える。
「頭が良いだけでなく親切で人好きのする鈴木克洋には数多くの友人がいますが僕はその中に含まれていません。友人ではありません。」
GPSで確認する2つのポイント。鈴木の携帯と思われるポイントは駒沢通りを早いスピードで通過していた。
携帯が鈴木から離れていることを確信する薪。
のこされた血痕のついた剣に、犯人の残り香……それは彼にはなじみのある香り、法定後見人の澤村が使っているクサノオウの塗り薬の香りだった。
血相を変えて鈴木と澤村の元へ駆けつけようとする薪
「まちなさい!君、何に気がついた?大体鈴木克洋は君の友人ではないのだろう?」と薪を呼び止めるグランドマスターの手を振り払い
「彼は友人じゃない!僕と何の関係もない!」と叫ぶ薪。
「彼は僕の家族でも親戚でもつい半月前までは知り合いですらなかった」
「なのに僕が…」
「彼は単なる親切心から協力して…」
彼をあの家に引き込んでーーー
薪は心の中で強く鈴木の名を呼んだ。
鈴木が自分の体にポツポツと落ちる雨と、水が激しく流れ込む音に目覚めるとそこはダイビングプールの底だった。
パイプ椅子に座らされ、腕を拘束されていた。
「ここがどこだかわかりますか?」
プールサイドから人影が覗き込む。
「小さい頃一度ここのプールで泳ぎたいと思ったことをあなたが叶えてくれるわけじゃなさそうですね。澤村さん」
自分を見下ろし不敵に笑う人影ーー澤村敏だった。
薪はグランドマスターが出した車で2人の元に向かっていた。
その道すがらグランドマスターがこれまでのことを語りだす
35年前に起きた「20世紀オリンピック公園リンチ事件」
被害者は近くに住む会社員。その遺体にはリンチの後があり、両目を抉られ暴行により死亡した後プールに投げ入れられていた
この事件が当時12歳であった澤村に大きな影を落としーー彼の今でこそ美しいと賞賛されるあの顔を自ら焼く原因となった事件だった。
被害者は別の「毒物混入甘酒事件」の重要参考人だったが、それは全くの冤罪でありすぐに拘留も解かれたものの、彼は妻子の元に帰れなかった。
彼は日本人だと一見わからないような外見をしていた。
しかも、聴覚障害者でうまくしゃべることができなかった。
それは日本政府の政策による外国人受け入れ政策により職を失った日本人たちの、「外国人アレルギー」による怒りの矛先がたまたまその会社員に向かってしまった結果だった。
その被害者がーー澤村の父親だったのだ。
その頃の日本では外国人は端から敵視する自警団までいて集団リンチをする外国人狩りも珍しくなかった。
日本人離れしたその容姿のせいで澤村敏自身も幼い頃から差別をうけ蔑まれてきた。
澤村は、そんな事件や世間に対して無関心な日本人達、自分には火の粉が降りかからない限り見て見ぬ振りをしている日本人達に憤りを感じていた。
それは親友であった薪俊にも。
この事件も、自警団も、外国人アレルギーでそれを暴力によって憂さ晴らしするあたりもすっごい昭和20〜30年っぽいんですけど……
なんかそういう事件実際にありましたよねえ?井戸に毒を入れたっていう噂により外国(韓国?)の人たちを見境なくリンチした事件……
いや、私もさすがに生まれてませんがこの頃を舞台にした漫画とか小説とかと同じような雰囲気がある……
最近「坂道のアポロン」を読んだんですけどね。あれも30年代の漫画なんですけど。主人公の一人が混血で、そんな自分に苦しんでいました。面白かったので、機会があればぜひ。
そしてもうさすがに「山手生まれだろ」なんて今の時代の若い子も言わないと思う……
言うのかな。私が地方出身者だから知らないだけ?いま実際に山手生まれ山手育ちとか言う人、東京では60歳以上だとおもうんだけど。
俊さんがいいとこの子だから?
2025年。父親の事件から15年後、「20世紀オリンピック公園」の新都市計画プランを広く募集することとなった。
20世紀オリンピック公園新都市計画の実現に情熱を燃やす澤村。
父親の犠牲も今までの苦労も総てが繋がって、自分はこの仕事のために生まれて今ここにいるのだとーー。
しかし、彼の総てをそそぎこんだそのマスタープランは、最後の最後で薪俊のプランに破れてしまう。
納得のいく理由が聞きたいと責任者に問う澤村だったが「薪くんのプランの方が優秀だった。それだけだ。」と言われ、さらに「君の父親が外国人という噂は本当か?」と聞かれる。
一体いつまでこの忌まわしい出来事に、顔に、差別に、耐えなくてはならないのかと苦悩する澤村。
「澤村君?ごめんなさい、誰もいないと思って」
そこに薪俊の婚約者、琴海が姿を見せる。
「もーいっつも用件も言わずに呼び出すんだからひどいよね?」と薪の姿を探すその肩をつかみーー
「そっちじゃない。こっちだ」
「薪もみんないるから、案内するよ」
微笑む婚約者の親友に、微笑み返す琴海
「ありがとう」
そして扉が重く締まったーーー
こういうコンペティションって「すごくやりたい」「絶対自分が」って意気込んでいる人のプランってなぜか通りにくいんだよねー……なぜかというと多分、そこに「自我」が強く出てしまうからだと思う。
とくにこういう公共のものって、使用するのは「普通の人々」だからそんな人たちのことをきっちり思いやれるプランじゃないと……そういうプランって、実は一見平凡に見えたりもするんだよね。分野は違うんだけど、そう思うこと度々ありました……。主役が誰かを忘れちゃいけないんだよね……。
「…私も本人たちから詳しく聞いたわけではない」
グランドマスターの説明に青ざめる薪
「この時に実際に何があったのか」
誰も何も語らなかった。だがいいライバルでもあり親友でもあった澤村と薪はこの時を境に突然絶縁状態になり、澤村はプレミアムを退会し姿を消した。
後に自主退会ではなく処罰されたのだという噂が流れたもののーーあくまでも噂だった。
薪俊はそのあとも新都市計画の中心的役割を担い、とうとう2035年5月、あの日に。
「20世紀オリンピック公園」を中心とする大規模な新都市計画の実現に漕ぎ着けたあの祝いの日のあの席でーー
グランドマスターは薪俊から息子を紹介される。
すこしはにかんだような表情を浮かべた愛らしい少年。
「はじめまして」
「薪剛 8さいです」
その顔は、あまりに澤村に似ていた。
ではあの9年前の噂ーーまことしやかに囁かれていた、澤村が琴海を暴行したこと、上層部が澤村を退会処分にしたことーー
衝撃を受けるグランドマスターだったが、「標準より少し小さいんですけどね」という薪俊の言葉に我に帰る
「利発でとても優しい」
「あの子は僕と琴海の自慢の息子です」
薪はグランドマスターからもらった推理小説を母親に見せていた。ありがとうございます、とにこやかにお辞儀する琴海
その様子を見ながらちょっと照れて「親バカですね!」という薪俊の表情ーー
「あの日一目君を見て何もかもがわかった」
「君たち家族の抱えてきた秘密がどのような辛いものであったかが」
「そして彼が、薪くんがその秘密をいかに大きな溢れるほどの愛情で包みこんで守ってきたのかが琴海さんとそして君を守り愛し育ててきたのかが」
「君さえ見ればよくわかった」

小さい頃の薪さん可愛い……
欲しかったミステリー本に頬を紅潮させてお礼をいったり薪パパに抱っこされてはしゃいだり、はにかみながら自己紹介したり、お母さんに「これみてー」的に話をしたり……
なんて愛らしい!!こんな幸せを奪うなんて、どんな人にだって、そんな権利はないですよ……うう……
でも、幼い剛くんも気がついてたんじゃないかなあ?うすうす。
絶対口さがない周りの人が「あそこお父さんにもお母さんにも似てないわよね」とか言ってたよね?!
なんでだろうって思ってたよね?!
でもきっと、俊さんの愛情はそれを上回っていたんでしょうね。もちろん俊さんや琴海にまったく葛藤がなかったわけはないし、苦く思う時だってあったと思いますが、それを上回る愛情だったんだと思います。だからこそ今の薪さんはわかりにくいけど稀有な優しさを持ったままで居られるんだと思う。
あー、あと琴海さんが何の事後処置もしなかったあたりも(アフターピルとかさ……)、俊さんと2人で秘密を抱えていたあたりもすっごい昭和30年代っぽい。
一方鈴木はーー自分の胸まで迫る水に浸かりながら澤村と相対していた
「プレミアムにあるあの写真をみればあなたが薪君の生物学上の父親である事は明々白々だ」
「澤村敏さん」
「しかし出生に関する負い目から正々堂々と剛君に父親だと名乗れないあなたは証拠の自分の顔を焼き若い頃の過去の写真は全て処分した。火災で総て消失したということにして真実を隠し通した」
「剛君を長男と認めないため俊さんが薪一族と義絶していた事はあなたに有利に働いた」
「そして」
「薪俊の新都市計画の実現化を阻止し彼の子供も財産も総て自分の物とするために10年前の5月5日あなたは薪家に火を放ち薪の両親を殺した」
「大正解ですか?」
歪んだ笑みを浮かべ、鈴木を見降ろす澤村
「まったく目ざわりな男だな」
「お前はまるであの薪俊のようだよ……お前さえいなければ剛がプレミアムの会員となり剛と私の生活も乱されることはなかった……剛の出生の件はなんとでも説明出来る」
薪俊さえいなければ……自分が……!
「たまたま同世代に薪俊という非凡な才能がいたから運が悪かった?薪俊さえいなければあなたがトップになれた?あなたの案が採用された?」
「ちがうでしょう」
「トップになれなかったのはもともとあなたにはそれだけの才能しかなかったからだ」
だから薪俊を排除しても何も状況は変わらなかった。澤村がプレミアムから除籍していたからでも、外国人の疑惑があったからでもない。
「あなた自身が評価に値しないからだ!」
「薪俊は関係ない!」
「黙れ!」
激しくなる雷と、プール脇で放電するコードをみて押し黙る鈴木
「大丈夫だよ。プールの中にいれば感電死することはない。水死はするけどね」とまた顔を歪めて笑う澤村
「今度は俺を排除するつもりですか…」
雷はますます激しさを増していく。
オリンピック公園に到着した薪は事件の始まりであるプールに駆けていく
鈴木は何の関係もない
僕の友達でも何でもない
幼なじみでもクラスメイトでもない
僕とは全然関係ない
鈴木のみせた色々な表情を思い出す薪。
止まったまんまの身長ものびんじゃね?と笑った顔
人に迷惑がかかったり非合法なことなら協力はできない、といった真剣な顔
いいよ、俺が協力してやるよーーーーと……
だから
だからダメだ
だめだ 澤村さん!
鈴木さん勇ましい……!
(縛られてるけど)
ここら辺も青木くんとは全然ちがう性格であることがうかがえますね。
きっと、鈴木さんなら沙羅に刺されても「すみません」なんて言わないと思うの。
どっちがいいというわけでもなく、「意外と似てないんだな」(byタッキー)ってことです。
でもあれ、浮きませんかね?椅子ごとプールに浮いちゃいそうですけど。
鈴木さん体脂肪率低そうだから浮かないのかな……パイプ椅子、プール底に接着してあるのかな……
あと出生の件、なんとでも説明でき……
…るわけねーだろ!!!!
どうやって!!実は琴海さん浮気してたんだよ〜的な?無理だよ!!無理無理!
澤村さんもうこのとき狂ってるのかもしれない。
いや、もう琴海さんに暴行した時点で狂っていたのかもしれない。
そしてグランドマスターはなんで何も証言しなかったの?そこまでわかっておきながらほったらかしにしたの??
外国行っちゃったって言っても証言くらいできるでしょ?
なぞじゃーーー!!!
はー次でなんとか終わりそう……
とうとうプレミアムの入会の儀式に潜入した薪と鈴木。
薪は礼拝堂の中に自分に生き写しの写真を見つける。その写真には55代目マスター澤村敏と記してあった。
そして、鈴木が何者かに連れ去られてしまうーー
それが澤村のしわざだと確信する薪。
2人を追う道すがらプレミアムのグランドマスターから衝撃の真実を聞かされる

あー鈴木さんたらこれで完璧にやられちゃったんだね……
プレミアム入会の儀式当日。
鈴木はメンバーから儀式進行の説明を受け、控え室で待機していた。
薪との打合せでちょうど5時に監視カメラの機能を止めることになっていた。
その打合せで、鈴木は
「オレに出来る事だったら大概なんでもしてやるが人に迷惑がかかったり非合法な事になるんだったら話は別だ。オレは協力できない。そこんところは大丈夫だろうな?」と薪に言う。
薪は驚いたような顔で鈴木を注視する。
「なんだ不満か?」
「いや」
ふわりと微笑む薪
「それを聞いて僕も安心した」
会員から抹消される前に命を抹消されることになる……ってますますプレミアムってどんな会なんだよ。
モンサンミッシェルを模した建物とか、純粋な日本人のための結社だとかいうのなら、そんなバタ臭い必要あるのか!
ここは出雲大社とかに似せて建てとけ!!
葉芝邸内礼拝堂ってことは個人宅内なのか……。冒頭に出てきた建物とはまた違うんだね。
そしてお花のように微笑む薪さん!かわいいかわいい!
やばい!鈴木さん完全にやられてる!!
監視カメラの異常を感知し、警備会社に連絡が入る。
薪はその警備員と入れ替わるように葉芝邸を訪れ、警備会社には邸内から誤作動であると電話を入れる。
儀式用のローブを纏い礼拝堂への潜入に成功する薪。
一方鈴木の控え室には会員が先ほどの誤作動のため点検に訪れた。
自分のせいで仕事増やしてすみません、と心の中で呟く鈴木だったが、先ほどのメンバーとは違う香りがすることに気がつく。
この香りは……薪邸に咲くあの……
「伝統を重んじるのはいい事ですが入館チェックも場所も時間も部屋の調度品まで私が使った30年前と同じというのは」
そういいながら調度品の鎧から剣をとりーー
「セキュリティとしていささか問題がありますね」
「澤…!」
澤村はそのまま剣を鈴木に振り下ろした。
いささか問題じゃなくて大問題だよ!
いまパスワードでさえ1ヶ月ごとに変えろっていわれてるのに、30年変えないってのはちょっと考えられないなー
(いやでも……おじさんやおじいさんだけだったらありうるのかしら……ときどき公共のもので変わらなさにぎょっとすることあるもんなー。)
そしてあの……そもそも論でもうしわけないんですけど、クサノオウでつくった軟膏よりいい薬がいっぱい出てると思うのね……2045年……
(2015年でも、いいのがあると思うのね……)
入会の儀式が時間になっても始まらないことを訝しく思う薪。
始まらないことにはどの会員が「マスター」かわからない。
双眼鏡で会員の様子をうかがうがある列の会員が全員「あの指輪」をつけていることに気がつく。そこに川谷議員の姿も認め、思わず身を乗り出してしまう。
その姿を川谷に発見されーー
「侵入者だ!」
薪は慌てて逃げだす。薪を捉えようと慌てる会員たちだったがまだセキュリティが復活していない。
滅茶苦茶に走って方向もわからず反響する足音に振り返りながら建物内を逃げる薪はーー
「一瞬、鏡かと思った」
自分の顔に生き写しの肖像写真を見つけるーー
その部屋には歴代のマスターの写真が飾ってあった。
そこには父親の写真もあり、『第54代目マスター 薪俊』と記してあった。
そしてその隣。
自分に生き写しの人物の下にはーー
『第55代目マスター 澤村敏」とあった
「そうしているとまるで鏡にうつしているようですね」
薪が振り返ると、川谷が「先生」と呼んでいたマスターの一人がミステリーの本を手に立っていた。
「君はもう本当はこのミステリーの犯人はわかっちゃってるんじゃないですか?」
その人はあの日。10年前のあの日、幼かった自分にその本を贈ってくれた人物だった。
「大きくなりましたね つよし……」
言いかけたその右手を取り、指輪を確認しその手の感触にそれを確信する薪。
「あなたが…!ではご存知なんですね。あの会食の意味を」
「あの夜亡くなった僕の父と母とーーいや…」
『第54代目マスター 薪俊』『第55代目マスター 澤村敏』が並んで写る写真を指差し
「僕の父は僕の父だったんですか?」
と問いかけるがーー
「グランドマスター!問題が起こりました!至急入会儀式中止か続行かご判断を!」
と走りこんでくるメンバー。
新入会員の控え室から入会予定者が姿を消したのだ。
備え付けの鎧の剣と壁についた血痕を残して。
「ここを使用していた入会予定者というのは?」
というグランドマスターの問いに「鈴木克洋」と答え、電話を入れる薪だが鈴木には繋がらない。
……プレミアムの人に携帯預かっておきますって言われてたのに。預けたやつはフェイクだったのかな……??
「行方不明の学生は君の知り合いか?ああ、そうか!東大の同じ文科一類!友人なのかね?」
「いいえ」
薪は携帯を操作しながら答える。
「頭が良いだけでなく親切で人好きのする鈴木克洋には数多くの友人がいますが僕はその中に含まれていません。友人ではありません。」
GPSで確認する2つのポイント。鈴木の携帯と思われるポイントは駒沢通りを早いスピードで通過していた。
携帯が鈴木から離れていることを確信する薪。
のこされた血痕のついた剣に、犯人の残り香……それは彼にはなじみのある香り、法定後見人の澤村が使っているクサノオウの塗り薬の香りだった。
血相を変えて鈴木と澤村の元へ駆けつけようとする薪
「まちなさい!君、何に気がついた?大体鈴木克洋は君の友人ではないのだろう?」と薪を呼び止めるグランドマスターの手を振り払い
「彼は友人じゃない!僕と何の関係もない!」と叫ぶ薪。
「彼は僕の家族でも親戚でもつい半月前までは知り合いですらなかった」
「なのに僕が…」
「彼は単なる親切心から協力して…」
彼をあの家に引き込んでーーー
薪は心の中で強く鈴木の名を呼んだ。
鈴木が自分の体にポツポツと落ちる雨と、水が激しく流れ込む音に目覚めるとそこはダイビングプールの底だった。
パイプ椅子に座らされ、腕を拘束されていた。
「ここがどこだかわかりますか?」
プールサイドから人影が覗き込む。
「小さい頃一度ここのプールで泳ぎたいと思ったことをあなたが叶えてくれるわけじゃなさそうですね。澤村さん」
自分を見下ろし不敵に笑う人影ーー澤村敏だった。
薪はグランドマスターが出した車で2人の元に向かっていた。
その道すがらグランドマスターがこれまでのことを語りだす
35年前に起きた「20世紀オリンピック公園リンチ事件」
被害者は近くに住む会社員。その遺体にはリンチの後があり、両目を抉られ暴行により死亡した後プールに投げ入れられていた
この事件が当時12歳であった澤村に大きな影を落としーー彼の今でこそ美しいと賞賛されるあの顔を自ら焼く原因となった事件だった。
被害者は別の「毒物混入甘酒事件」の重要参考人だったが、それは全くの冤罪でありすぐに拘留も解かれたものの、彼は妻子の元に帰れなかった。
彼は日本人だと一見わからないような外見をしていた。
しかも、聴覚障害者でうまくしゃべることができなかった。
それは日本政府の政策による外国人受け入れ政策により職を失った日本人たちの、「外国人アレルギー」による怒りの矛先がたまたまその会社員に向かってしまった結果だった。
その被害者がーー澤村の父親だったのだ。
その頃の日本では外国人は端から敵視する自警団までいて集団リンチをする外国人狩りも珍しくなかった。
日本人離れしたその容姿のせいで澤村敏自身も幼い頃から差別をうけ蔑まれてきた。
澤村は、そんな事件や世間に対して無関心な日本人達、自分には火の粉が降りかからない限り見て見ぬ振りをしている日本人達に憤りを感じていた。
それは親友であった薪俊にも。
この事件も、自警団も、外国人アレルギーでそれを暴力によって憂さ晴らしするあたりもすっごい昭和20〜30年っぽいんですけど……
なんかそういう事件実際にありましたよねえ?井戸に毒を入れたっていう噂により外国(韓国?)の人たちを見境なくリンチした事件……
いや、私もさすがに生まれてませんがこの頃を舞台にした漫画とか小説とかと同じような雰囲気がある……
最近「坂道のアポロン」を読んだんですけどね。あれも30年代の漫画なんですけど。主人公の一人が混血で、そんな自分に苦しんでいました。面白かったので、機会があればぜひ。
そしてもうさすがに「山手生まれだろ」なんて今の時代の若い子も言わないと思う……
言うのかな。私が地方出身者だから知らないだけ?いま実際に山手生まれ山手育ちとか言う人、東京では60歳以上だとおもうんだけど。
俊さんがいいとこの子だから?
2025年。父親の事件から15年後、「20世紀オリンピック公園」の新都市計画プランを広く募集することとなった。
20世紀オリンピック公園新都市計画の実現に情熱を燃やす澤村。
父親の犠牲も今までの苦労も総てが繋がって、自分はこの仕事のために生まれて今ここにいるのだとーー。
しかし、彼の総てをそそぎこんだそのマスタープランは、最後の最後で薪俊のプランに破れてしまう。
納得のいく理由が聞きたいと責任者に問う澤村だったが「薪くんのプランの方が優秀だった。それだけだ。」と言われ、さらに「君の父親が外国人という噂は本当か?」と聞かれる。
一体いつまでこの忌まわしい出来事に、顔に、差別に、耐えなくてはならないのかと苦悩する澤村。
「澤村君?ごめんなさい、誰もいないと思って」
そこに薪俊の婚約者、琴海が姿を見せる。
「もーいっつも用件も言わずに呼び出すんだからひどいよね?」と薪の姿を探すその肩をつかみーー
「そっちじゃない。こっちだ」
「薪もみんないるから、案内するよ」
微笑む婚約者の親友に、微笑み返す琴海
「ありがとう」
そして扉が重く締まったーーー
こういうコンペティションって「すごくやりたい」「絶対自分が」って意気込んでいる人のプランってなぜか通りにくいんだよねー……なぜかというと多分、そこに「自我」が強く出てしまうからだと思う。
とくにこういう公共のものって、使用するのは「普通の人々」だからそんな人たちのことをきっちり思いやれるプランじゃないと……そういうプランって、実は一見平凡に見えたりもするんだよね。分野は違うんだけど、そう思うこと度々ありました……。主役が誰かを忘れちゃいけないんだよね……。
「…私も本人たちから詳しく聞いたわけではない」
グランドマスターの説明に青ざめる薪
「この時に実際に何があったのか」
誰も何も語らなかった。だがいいライバルでもあり親友でもあった澤村と薪はこの時を境に突然絶縁状態になり、澤村はプレミアムを退会し姿を消した。
後に自主退会ではなく処罰されたのだという噂が流れたもののーーあくまでも噂だった。
薪俊はそのあとも新都市計画の中心的役割を担い、とうとう2035年5月、あの日に。
「20世紀オリンピック公園」を中心とする大規模な新都市計画の実現に漕ぎ着けたあの祝いの日のあの席でーー
グランドマスターは薪俊から息子を紹介される。
すこしはにかんだような表情を浮かべた愛らしい少年。
「はじめまして」
「薪剛 8さいです」
その顔は、あまりに澤村に似ていた。
ではあの9年前の噂ーーまことしやかに囁かれていた、澤村が琴海を暴行したこと、上層部が澤村を退会処分にしたことーー
衝撃を受けるグランドマスターだったが、「標準より少し小さいんですけどね」という薪俊の言葉に我に帰る
「利発でとても優しい」
「あの子は僕と琴海の自慢の息子です」
薪はグランドマスターからもらった推理小説を母親に見せていた。ありがとうございます、とにこやかにお辞儀する琴海
その様子を見ながらちょっと照れて「親バカですね!」という薪俊の表情ーー
「あの日一目君を見て何もかもがわかった」
「君たち家族の抱えてきた秘密がどのような辛いものであったかが」
「そして彼が、薪くんがその秘密をいかに大きな溢れるほどの愛情で包みこんで守ってきたのかが琴海さんとそして君を守り愛し育ててきたのかが」
「君さえ見ればよくわかった」

小さい頃の薪さん可愛い……
欲しかったミステリー本に頬を紅潮させてお礼をいったり薪パパに抱っこされてはしゃいだり、はにかみながら自己紹介したり、お母さんに「これみてー」的に話をしたり……
なんて愛らしい!!こんな幸せを奪うなんて、どんな人にだって、そんな権利はないですよ……うう……
でも、幼い剛くんも気がついてたんじゃないかなあ?うすうす。
絶対口さがない周りの人が「あそこお父さんにもお母さんにも似てないわよね」とか言ってたよね?!
なんでだろうって思ってたよね?!
でもきっと、俊さんの愛情はそれを上回っていたんでしょうね。もちろん俊さんや琴海にまったく葛藤がなかったわけはないし、苦く思う時だってあったと思いますが、それを上回る愛情だったんだと思います。だからこそ今の薪さんはわかりにくいけど稀有な優しさを持ったままで居られるんだと思う。
あー、あと琴海さんが何の事後処置もしなかったあたりも(アフターピルとかさ……)、俊さんと2人で秘密を抱えていたあたりもすっごい昭和30年代っぽい。
一方鈴木はーー自分の胸まで迫る水に浸かりながら澤村と相対していた
「プレミアムにあるあの写真をみればあなたが薪君の生物学上の父親である事は明々白々だ」
「澤村敏さん」
「しかし出生に関する負い目から正々堂々と剛君に父親だと名乗れないあなたは証拠の自分の顔を焼き若い頃の過去の写真は全て処分した。火災で総て消失したということにして真実を隠し通した」
「剛君を長男と認めないため俊さんが薪一族と義絶していた事はあなたに有利に働いた」
「そして」
「薪俊の新都市計画の実現化を阻止し彼の子供も財産も総て自分の物とするために10年前の5月5日あなたは薪家に火を放ち薪の両親を殺した」
「大正解ですか?」
歪んだ笑みを浮かべ、鈴木を見降ろす澤村
「まったく目ざわりな男だな」
「お前はまるであの薪俊のようだよ……お前さえいなければ剛がプレミアムの会員となり剛と私の生活も乱されることはなかった……剛の出生の件はなんとでも説明出来る」
薪俊さえいなければ……自分が……!
「たまたま同世代に薪俊という非凡な才能がいたから運が悪かった?薪俊さえいなければあなたがトップになれた?あなたの案が採用された?」
「ちがうでしょう」
「トップになれなかったのはもともとあなたにはそれだけの才能しかなかったからだ」
だから薪俊を排除しても何も状況は変わらなかった。澤村がプレミアムから除籍していたからでも、外国人の疑惑があったからでもない。
「あなた自身が評価に値しないからだ!」
「薪俊は関係ない!」
「黙れ!」
激しくなる雷と、プール脇で放電するコードをみて押し黙る鈴木
「大丈夫だよ。プールの中にいれば感電死することはない。水死はするけどね」とまた顔を歪めて笑う澤村
「今度は俺を排除するつもりですか…」
雷はますます激しさを増していく。
オリンピック公園に到着した薪は事件の始まりであるプールに駆けていく
鈴木は何の関係もない
僕の友達でも何でもない
幼なじみでもクラスメイトでもない
僕とは全然関係ない
鈴木のみせた色々な表情を思い出す薪。
止まったまんまの身長ものびんじゃね?と笑った顔
人に迷惑がかかったり非合法なことなら協力はできない、といった真剣な顔
いいよ、俺が協力してやるよーーーーと……
だから
だからダメだ
だめだ 澤村さん!
鈴木さん勇ましい……!
(縛られてるけど)
ここら辺も青木くんとは全然ちがう性格であることがうかがえますね。
きっと、鈴木さんなら沙羅に刺されても「すみません」なんて言わないと思うの。
どっちがいいというわけでもなく、「意外と似てないんだな」(byタッキー)ってことです。
でもあれ、浮きませんかね?椅子ごとプールに浮いちゃいそうですけど。
鈴木さん体脂肪率低そうだから浮かないのかな……パイプ椅子、プール底に接着してあるのかな……
あと出生の件、なんとでも説明でき……
…るわけねーだろ!!!!
どうやって!!実は琴海さん浮気してたんだよ〜的な?無理だよ!!無理無理!
澤村さんもうこのとき狂ってるのかもしれない。
いや、もう琴海さんに暴行した時点で狂っていたのかもしれない。
そしてグランドマスターはなんで何も証言しなかったの?そこまでわかっておきながらほったらかしにしたの??
外国行っちゃったって言っても証言くらいできるでしょ?
なぞじゃーーー!!!
はー次でなんとか終わりそう……
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