もう一度だけ君に会えるのなら(1)
えー、その5まで続いていた今日の岡薪をちょっとお休みいたしまして……
このブログでも「鈴薪まつり」を開催したいと思います。
すでにあちこちで始まっております「鈴薪まつり」!
私も鈴木さんは大好きなのでぜひ参加したいと思いまして……
そして、実はずーーっとかいてみたいと思っていたお話がありまして……
本当は漫画で描いてみたかったんですけど……
無理だった……
10年くらいかかっちゃうよ!
ネーム割るから小人さん描いてください。とふざけたことを思ったりしたのですが描いてくれるはずもなく……
しかたないので小説にしてみました。
小説なら書けるのかっていうと書けないんだこれがまた!(笑)
初心者マーク、若葉マークなので生温かい目で見守っていただければと思います。
自分でもわかっているんですが、拙い文章で多分小説の作法?などもいい加減だと思います。校正さんが目にしたらMacを壊されてしまうかもしれません。
描いてみたかったお話というのは、以前記事でもお話したこの歌を下敷きにしたものです。
秘密を知る以前から知ってたこの歌が、薪さんのイメージにぴったりすぎて薪さんソングにしか聞こえなくなってしまったのですが。
そんなそんなわけで、章ごと?にイメージする歌詞をブルーで載せています。これはこの歌の歌詞ですので、興味のある方は聞いてみてください。なんなら買ってくださってもいいですよ……(長らくのまさよしファン)
えっと、多分5回にわけて、載せていきます!
今回はおふざけが一切ありません。どっちかっつーと重いです。
では、心の広い方のみどうぞ〜
あっ、このお話はですね、3巻と4巻の間くらいの時間の設定です。
まだまだ薪さんは鈴木さんに囚われまくってます!
そのあたりどーぞよろしくです!
これ以上なにを失えば心は許されるの
どれほどの痛みならばもう一度君に会える?

「岡部さん、薪さんはーー?」
科学警察研究所法医第九研究室の新人青木一行は、珍しく朝から姿を見せない室長を気にしていた。
「薪さんは今日は午後からだ。」
そっけなく答える岡部に、青木はメガネの向こうで少し目を丸くした。
「珍しいですね。薪さんが……午前休ですか?」
仕事でどこかに立ち寄っているのなら、岡部はきっとそういうだろう。第九に朝一番に来て一番遅くまでいる、休みらしい休みも取らない薪にしては平日の午前休なんて珍しい。
「……そうだな。まあ、たまにはそういうこともあるだろう。」
なぜか岡部は少し重い口調で静かに言って、ほんの数秒一点を見つめて考え込んだ。
気を取り直すように短いため息をつくといつものように青木に笑いかけ「何か用だったのか?」と問う。報告書を見てもらおうと思っただけなので、出勤されたら提出します。と青木も微笑みかえした。
薪のいない第九は、どこか物足りない。
おそらく岡部も、他の皆もそう思っているはずだ。
気の抜けた炭酸のような……いや。
1ピース足りないパズルのような。
それも一番肝心なピースだ。
と青木は心の中で呟いて自分用の椅子をひき、その長身の身体を預けた。
薪は横浜に来ていた。
鈴木の命日は過ぎてお盆も少し過ぎ、人があまり来なくなった遠くかすかに海が見える墓地に。
午前中とはいえ8月の太陽の熱が世界を茹で上げているような暑さだ。
首筋につたってくる汗を拭ってひとつため息をつく。
手を洗い清め、手桶に水を汲み花を左手に抱えた。
本当はーー
墓前に来ることさえ許されないのかもしれない。
そう思いながらも重い足を前に運んだ。
ただーー
もし、もし本当に鈴木が僕を護ろうとしていたのなら。
せめて墓前に花を手向けることを許して欲しい。
ふと薪は苦笑した
誰に?
自分は誰に許して欲しいのだろう。鈴木に?鈴木の両親に?雪子に?
許されるわけがない。
許して欲しいわけじゃない。僕の罪は永遠に消えることはない。
鈴木がもう戻ってくることがないように。
暑さにゆらりと揺れる視界に眉をしかめつつ、鈴木家の墓前に立ちつややかな石に彫り込まれた漢字を見つめた。
「鈴木」
その名前を口にすると胸が詰まるような苦しさが襲ってくる。
折れそうになる膝に力を入れて、薪は淡々と墓参りの手順を踏んだ。
墓の周りは美しく整えられていた。掃除などするまでもない。
彼は皆に愛されていた。両親にも妹にも友達にも恋人にも。亡くなってもなお、墓さえもその事実を物語っている。
さすがに夏の暑さのせいか、花は取り除かれていたので水を入れ、花を供え、線香をあげた。
やっと一息ついて手を合わせる。
「すずき」
いつもいつも。
出会ってから毎日のようにその名前を呼んでいた。
いつも一緒にいてくれた、唯一無二の親友だった。なのにーー。
もうその名前を呼ぶことはない。
そして、自分の名前を呼んでくれることもない。
「薪」と自分の名前を呼ぶときの笑顔が好きだった。
考え事をするとき傾いだ首に浮かぶ筋や、すんなりとした腕の骨の形が好きだった。
柔らかい深い響きの声が好きだった。伏せた目のきちんと揃ったまつげが好きだった。
頭の良さや思いやりの深さ、明るく大雑把に見えて実は他人の心の機微をよく捉える性格が好きだった。
でもそのことを口にしたことはない。
口にしようと思ったことさえない。
全部自分の心に秘めた「秘密」だった。
線香の煙がぬるい夏の空気に溶けていく。
鈴木。
本当にお前はどうして、僕を護ろうなんて思ったんだ?
どうして、一人で貝沼の脳なんか見たんだ?
どうして、僕に脳を撃ってくれなんて望んだ?
どうして?
お前を失うくらいなら、あのときどうして僕はーー
自分の思考に深く沈んでいた薪は、遠くに人の声がして我に返った。
墓参りにやってきたらしい家族連れの、子供がくずっているらしく母親がたしなめている声が聞こえる。
立ち上がって、桶を手に取り踵を返す。誰とも顔を合わせたくない。たとえ鈴木となんの関係のない人でも。
備品の片付けをする薪の視界の端に親子連れが目に入った。
子供を大事そうに抱きかかえ、何やら話しかける母親とそれを見守る父親。
なんでもない普通のその光景が神々しくさえ見えた。
逃げるように、その場から立ち去った。なぜか一刻も早くその家族から遠ざかりたかった。
気がつかないうちに自分の歩調が早まり、最後は駆け足になっていた。墓地の参道に敷き詰められた石につまづき、足がもつれる。
「あっ……!」
無様に転び、膝をしたたかにうつ。じわっとした痛みが身体に広がった。
転ぶなんて、いつぶりなんだ。子供じゃあるまいし。薪は自嘲の笑いを漏らし、立ち上がってスーツの埃を払った。
立ち上がって見遣った遠くに、横浜の街と小さな海のきらめきが見えた。
続
このブログでも「鈴薪まつり」を開催したいと思います。
すでにあちこちで始まっております「鈴薪まつり」!
私も鈴木さんは大好きなのでぜひ参加したいと思いまして……
そして、実はずーーっとかいてみたいと思っていたお話がありまして……
本当は漫画で描いてみたかったんですけど……
無理だった……
10年くらいかかっちゃうよ!
ネーム割るから小人さん描いてください。とふざけたことを思ったりしたのですが描いてくれるはずもなく……
しかたないので小説にしてみました。
小説なら書けるのかっていうと書けないんだこれがまた!(笑)
初心者マーク、若葉マークなので生温かい目で見守っていただければと思います。
自分でもわかっているんですが、拙い文章で多分小説の作法?などもいい加減だと思います。校正さんが目にしたらMacを壊されてしまうかもしれません。
描いてみたかったお話というのは、以前記事でもお話したこの歌を下敷きにしたものです。
秘密を知る以前から知ってたこの歌が、薪さんのイメージにぴったりすぎて薪さんソングにしか聞こえなくなってしまったのですが。
そんなそんなわけで、章ごと?にイメージする歌詞をブルーで載せています。これはこの歌の歌詞ですので、興味のある方は聞いてみてください。なんなら買ってくださってもいいですよ……(長らくのまさよしファン)
えっと、多分5回にわけて、載せていきます!
今回はおふざけが一切ありません。どっちかっつーと重いです。
では、心の広い方のみどうぞ〜
あっ、このお話はですね、3巻と4巻の間くらいの時間の設定です。
まだまだ薪さんは鈴木さんに囚われまくってます!
そのあたりどーぞよろしくです!
これ以上なにを失えば心は許されるの
どれほどの痛みならばもう一度君に会える?

「岡部さん、薪さんはーー?」
科学警察研究所法医第九研究室の新人青木一行は、珍しく朝から姿を見せない室長を気にしていた。
「薪さんは今日は午後からだ。」
そっけなく答える岡部に、青木はメガネの向こうで少し目を丸くした。
「珍しいですね。薪さんが……午前休ですか?」
仕事でどこかに立ち寄っているのなら、岡部はきっとそういうだろう。第九に朝一番に来て一番遅くまでいる、休みらしい休みも取らない薪にしては平日の午前休なんて珍しい。
「……そうだな。まあ、たまにはそういうこともあるだろう。」
なぜか岡部は少し重い口調で静かに言って、ほんの数秒一点を見つめて考え込んだ。
気を取り直すように短いため息をつくといつものように青木に笑いかけ「何か用だったのか?」と問う。報告書を見てもらおうと思っただけなので、出勤されたら提出します。と青木も微笑みかえした。
薪のいない第九は、どこか物足りない。
おそらく岡部も、他の皆もそう思っているはずだ。
気の抜けた炭酸のような……いや。
1ピース足りないパズルのような。
それも一番肝心なピースだ。
と青木は心の中で呟いて自分用の椅子をひき、その長身の身体を預けた。
薪は横浜に来ていた。
鈴木の命日は過ぎてお盆も少し過ぎ、人があまり来なくなった遠くかすかに海が見える墓地に。
午前中とはいえ8月の太陽の熱が世界を茹で上げているような暑さだ。
首筋につたってくる汗を拭ってひとつため息をつく。
手を洗い清め、手桶に水を汲み花を左手に抱えた。
本当はーー
墓前に来ることさえ許されないのかもしれない。
そう思いながらも重い足を前に運んだ。
ただーー
もし、もし本当に鈴木が僕を護ろうとしていたのなら。
せめて墓前に花を手向けることを許して欲しい。
ふと薪は苦笑した
誰に?
自分は誰に許して欲しいのだろう。鈴木に?鈴木の両親に?雪子に?
許されるわけがない。
許して欲しいわけじゃない。僕の罪は永遠に消えることはない。
鈴木がもう戻ってくることがないように。
暑さにゆらりと揺れる視界に眉をしかめつつ、鈴木家の墓前に立ちつややかな石に彫り込まれた漢字を見つめた。
「鈴木」
その名前を口にすると胸が詰まるような苦しさが襲ってくる。
折れそうになる膝に力を入れて、薪は淡々と墓参りの手順を踏んだ。
墓の周りは美しく整えられていた。掃除などするまでもない。
彼は皆に愛されていた。両親にも妹にも友達にも恋人にも。亡くなってもなお、墓さえもその事実を物語っている。
さすがに夏の暑さのせいか、花は取り除かれていたので水を入れ、花を供え、線香をあげた。
やっと一息ついて手を合わせる。
「すずき」
いつもいつも。
出会ってから毎日のようにその名前を呼んでいた。
いつも一緒にいてくれた、唯一無二の親友だった。なのにーー。
もうその名前を呼ぶことはない。
そして、自分の名前を呼んでくれることもない。
「薪」と自分の名前を呼ぶときの笑顔が好きだった。
考え事をするとき傾いだ首に浮かぶ筋や、すんなりとした腕の骨の形が好きだった。
柔らかい深い響きの声が好きだった。伏せた目のきちんと揃ったまつげが好きだった。
頭の良さや思いやりの深さ、明るく大雑把に見えて実は他人の心の機微をよく捉える性格が好きだった。
でもそのことを口にしたことはない。
口にしようと思ったことさえない。
全部自分の心に秘めた「秘密」だった。
線香の煙がぬるい夏の空気に溶けていく。
鈴木。
本当にお前はどうして、僕を護ろうなんて思ったんだ?
どうして、一人で貝沼の脳なんか見たんだ?
どうして、僕に脳を撃ってくれなんて望んだ?
どうして?
お前を失うくらいなら、あのときどうして僕はーー
自分の思考に深く沈んでいた薪は、遠くに人の声がして我に返った。
墓参りにやってきたらしい家族連れの、子供がくずっているらしく母親がたしなめている声が聞こえる。
立ち上がって、桶を手に取り踵を返す。誰とも顔を合わせたくない。たとえ鈴木となんの関係のない人でも。
備品の片付けをする薪の視界の端に親子連れが目に入った。
子供を大事そうに抱きかかえ、何やら話しかける母親とそれを見守る父親。
なんでもない普通のその光景が神々しくさえ見えた。
逃げるように、その場から立ち去った。なぜか一刻も早くその家族から遠ざかりたかった。
気がつかないうちに自分の歩調が早まり、最後は駆け足になっていた。墓地の参道に敷き詰められた石につまづき、足がもつれる。
「あっ……!」
無様に転び、膝をしたたかにうつ。じわっとした痛みが身体に広がった。
転ぶなんて、いつぶりなんだ。子供じゃあるまいし。薪は自嘲の笑いを漏らし、立ち上がってスーツの埃を払った。
立ち上がって見遣った遠くに、横浜の街と小さな海のきらめきが見えた。
続
スポンサーサイト